高齢者の免許返納のメリット 安心・安全な未来への選択

人生100年時代と言われる現代、いつまでも健康でアクティブな生活を送りたいと願う高齢者の方は多いと思います。

しかし、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下はどうしても避けられず、安全運転への心配が出てきます。

そこで、考えたいのが「自動車免許の返納」です。

免許返納は、高齢者ドライバー自身だけでなく、周囲の人々にとっても安心な選択肢の一つです。

この記事では、高齢者が自動車免許を返納するメリットについて、様々な観点から解説します。

高齢ドライバーによる事故の増加

危険運転している高齢者ドライバー

高齢化が進む日本では、高齢ドライバーの数も増加の一途を辿っています。

内閣府の令和6年版交通安全白書「令和5年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」によると、

死亡事故件数全体に占める高齢運転者の割合も増加しています。

65歳以上の交通事故死者数が交通事故死者数全体に占める割合は,平成元年は22.7%でしたが,令和5年は54.7%となっています。

65歳以上の運転者の件数は,年齢層が高くなるとともに多くなる傾向にあり、特に80~84歳及び85歳以上の運転者については,令和5年はそれぞれ全年齢層の件数の約2.0倍,約3.4倍となっています。

高齢になると、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下が起きるため、事故リスクがどうしても増加してしまい、それが数字に明白に現れているのが現状です。

高齢者ドライバーが安全に運転するために

安全運転している高齢者ドライバー

自動車免許返納制度とは、高齢者ドライバーが自らの意思で運転免許証を返納する制度です。

免許返納は、高齢者ドライバーが安全に運転を続けるための選択肢の一つです。

しかし、免許返納以外にも、安全運転を支援する様々な技術やサービスがあります。

安全運転サポート車(サポカーS)の利用

サポカーのイメージ

サポカーは衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)などの先進安全技術を活用した一定の運転支援機能を備えた車のことです。

自動ブレーキなどの先進安全技術を搭載したサポカーSを利用することで、事故のリスクを軽減することができます。

サポカーSには、衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い急発進抑制装置、車線逸脱警報装置などの機能が搭載されています。

サポカーS、高齢ドライバーの運転操作ミスを防止し、安全運転を支援する上で有効です。

参考:サポカー https://www.safety-support-car.go.jp/

運転技能の維持・向上

定期的な運転練習や講習会に参加することで、運転技能の維持を図ることができます。

高齢者向けの運転講習会では、加齢に伴う身体機能や認知機能の変化を理解し、安全運転に必要な知識や技能を学ぶことができます。

参考:高齢運転者支援サイト https://www.zensiren.or.jp/kourei/flow/flow.html

また、運転シミュレーターを使った訓練など、実践的な練習を行うこともできます。

自動車免許返納制度の概要

免許返納の写真

自動車免許返納制度とは、高齢者ドライバーが自らの意思で運転免許証を返納する制度です。

運転に不安を感じ始めた高齢ドライバーは、警察署に申請することで運転免許証を返納することができます。

また、年齢制限はありませんが、主に高齢ドライバーを対象とした制度です。

近年、高齢ドライバーの自主返納が増加傾向にあり、警察庁の「運転免許統計 令和5年版」では、65歳以上のドライバーから約38万件の申請がありました。

そのうち、約26万件は75歳以上のドライバーからの申請でした。

これは、高齢者自身の安全意識の高まりが現れていると考えられます。

免許返納の手続きは、各都道府県警察の運転免許センターまたは警察署で行います。

必要なものは、運転免許証と申請書です。手数料はかかりません。

申請後、運転免許証は回収され、運転ができなくなります。

免許返納の条件は、有効な運転免許証を所持していることです。

免許停止中や取消処分を受けている場合は、返納できません。

免許返納によるメリット

貯金の写真

免許返納には、様々なメリットがあります。

①維持費の削減

まず一番に、車両の維持費(自動車税、自動車保険料、ガソリン代、車検費用など)や駐車場代が不要になります。

SBI損保の試算によると、自動車の維持費の全国平均は軽自動車で年間33万円、普通車で年間42万円です(概算です)

軽自動車の年間(月)の維持費は?普通車との比較 SBI損保

https://www.sbisonpo.co.jp/car/column/column06.html

そのため、年間33-42万円の支出を削減でき、家計の負担を大きく軽減することができます。

②車の売却による収入と優遇措置

免許返納と同時に車を売却することで、まとまったお金を得ることができます。

一部のディーラーや中古車販売店では、免許返納者向けの優遇措置を設けている場合があり、

実際にカーネクストは免許返納自主返納特典として、普通車の買取価格を通常から+1万円プラスしています。(2025年1月26日時点)

https://cmgroup.jp/drivinglicence-return

③健康増進

車を手放すことで、公共交通機関や自転車、シニアカーなどの、車以外の移動手段を使うことになります。

バス停や駅まで歩いたり、自転車に乗ったりすることで、適度な運動になり、健康増進に繋がります。

④交通事故リスクの軽減と家族の安心

免許返納により、交通事故のリスクを大幅に減らすことができます。

高齢ドライバーは、先ほど解説した通り、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下により、事故を起こすリスクが高くなります。免許返納は、自分自身だけでなく、周囲の人々を安心させる選択にもなります。

免許返納の促進と特典

免許返納を促進するために、国や地方自治体が取り組みを行っています。

自治体による免許返納者への支援

多くの自治体では、免許返納者に対して、公共交通機関の割引やタクシー券の発行、生活支援サービスの提供など、様々な支援を行っています。

例えば、静岡県では、「運転免許自主返納者サポート事業」を行っており、加盟事業所と連携し、免許返納者に対して、公共交通機関の運賃割引、飲食代割引、電動車椅子の割引などの特典を提供しています。

https://www.pref.shizuoka.jp/police/anzen/henno.html

政府の取り組み

高齢者の交通事故防止を目的とした「高齢運転者による交通事故防止対策推進法」に基づき、様々な対策をしています。

認知機能検査の導入や、安全運転サポート車の普及促進、免許返納後の特典の充実などが主な取り組みです。

運転経歴証明書の交付

免許返納後は、運転経歴証明書を交付してもらうことができます。

運転経歴証明書は、運転免許証の代わりに身分証明書として利用できるほか、様々な特典を受けることができます。 運転経歴証明書には有効期限がなく、生涯にわたって使用することができます。

参考:警察庁 運転免許証の自主返納について

https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/jishuhennou.html

特典例

  • 公共交通機関の割引: 電車やバスの運賃が割引になる。 例えば、JR東日本や東京メトロでは、高齢者向けの割引乗車券を販売しています。
  • タクシー料金の割引: タクシー料金が割引になる。 例えば、東京都内では、高齢者運転免許自主返納サポート協議会に加盟しているタクシー会社で、タクシー料金が割引になるサービスがあります。  
  • 商業施設での割引: デパートやスーパーマーケットでの買い物が割引になる。 例えば、高島屋では、自宅への配送を無料で行うサービスがあります。
  • レジャー施設の割引: 映画館や遊園地などの入場料が割引になる。 例えば、帝国ホテル東京では、直営レストラン・バーラウンジで10%の割引を受けることができます。
  • 飲食店の割引: レストランや喫茶店での飲食代が割引になる。 例えば、多くの飲食店で、高齢者向けの割引メニューや割引サービスを提供しています。
  • その他: 金融機関の優遇金利、宅配サービスの割引など、様々な特典があります。 例えば、千葉県では、「運転経歴証明書交付済みシール」を申請することができます。 このシールをマイナンバーカードケースの裏面に貼ることで、運転経歴証明書本体を携帯していなくても、交付済みであることを証明することができます。

参考:一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会 高齢運転者支援サイト 運転免許証の自主返納をお考えの方へ -各種特典のご案内-

https://www.zensiren.or.jp/kourei/return/relist.html

※特典の内容や利用方法は、地域や企業によって異なります。

まとめ

幸せに暮らしている家族

高齢者の免許返納は、自分自身の安全を守るだけでなく、社会全体の安全にも貢献します。

免許返納には、経済的なメリット、安全性の向上など、様々なメリットがあります。

近年では、免許返納後の移動手段の確保や支援制度も充実してきています。

免許返納を検討する際には、この記事で紹介したメリットや支援制度などを参考に、自分自身の状況に合わせて判断しましょう。

より詳しい情報や、お住まいの地域の支援制度については、各都道府県警察の運転免許センターや警察署、または自治体のホームページなどでご確認ください。

この記事へのリアクションは?
+1
0
+1
0
+1
0
+1
0
+1
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA