クマから身を守る!遭遇予防と襲われた時の対応、役立つツールを解説
深刻化するクマ被害
クマ被害が深刻化しています。2025年は、襲われて死亡した人が過去最悪となっていることが明らかになっています。けがを含めた人身被害者の総数も過去最多で増えており、専門家が注意を呼びかけています。
今年は早い時期から住宅地など人の生活圏で続発しており、全国で人身被害のリスクが高まっています。クマが増えたのは様々な要因があると言われていますが、
北海道大学大学院獣医学研究院の坪田敏男教授は、東洋経済オンラインの記事において
「植物性の餌が乏しいとき、クマはアリやハチを食べてしのいでいます。しかし、人里に生ゴミや農作物など栄養価の高い餌があることを学習すれば、そちらに向かうようになります。執着心が強い動物でもあるので、『もう一度食べたい』となったら抑えがきかず、行動がエスカレートしていきます。」
と述べています。
参考URL:「相次ぐ被害「人を恐れないクマ」はなぜ増えた?最前線の研究者が教える「熊害が発生するワケ」と「遭遇時に身を守る対策」、そして共存への可能性 | 東洋経済オンライン」
参考URL:クマによる死者7人、過去最悪に…専門家「人里に依存する個体が増えている恐れ」(産経新聞・2025年10月3日)
参考URL:市街地で発砲、「緊急銃猟」で初のクマ駆除 25年度の犠牲は最多7人に(日本経済新聞)
政府および関係省庁はこの問題を申告に捉えており、環境省をはじめとする機関は、クマ被害対策に関する関係省庁連絡会議を積極的に開催しています。
クマの被害を防ぐための万全な対策はないと言われています。クマは個体によって性格が異なる場合があるため、その行動を完全に予測することは不可能です。
しかし、個人でできるクマ対策はたくさんあります。この記事では、クマとの遭遇を未然に防ぐ予防策と、万が一遭遇した場合、生命を守るための防御手段と役立つツールを解説します。
第1章 クマの生態を知る 山はクマの生活場所 特に深夜と早朝は活動活発化
はじめに、クマが持つ生態と行動を理解することが重要です。
クマの居住エリアは山域です。クマは、山域で採食、繁殖、そして冬眠を行います。
この認識が欠けていると、無意識のうちにクマのテリトリーに侵入し、不必要な遭遇を生むことになります。
また、クマは、多くの野生動物と同様に、特定の時間帯に活動が活発化する傾向があります。一般的に、早朝や夕方はクマが食料を探し、移動する時間帯と重なります。
クマの活動が活発な早朝や夕方の入山は避けましょう。
第2章 クマとの遭遇を予防する
クマとの遭遇は、適切な予防策を講じることで、そのリスクを下げることが可能です。遭遇後の対処法を知る以上に、「遭遇予防」が重要です。
音の出る物を持っていく
クマの多くは臆病な性質を持っており、人間の存在を事前に察知すれば、多くの場合、自発的にその場を避けてくれます。
そのため、山中では、鈴やラジオなどを利用して途切れることなく音を出すことが、遭遇防止になります。
生ゴミを放置しない
クマは優れた嗅覚を持っており、人間の食べ物や調理後の生ゴミの匂いを広範囲から嗅ぎつけることができます。これらの匂いは、クマにとって人間の活動エリアを「餌場」として学習させてしまいます。山域に立ち入る際は、匂いのする食べ物は極力持ち込みを避け、発生した生ゴミは必ず密封して持ち帰ることが必須です。
子グマ遭遇時の対応
特に警戒すべきは子グマとの遭遇です。子グマが近くにいる場合、その母親である親グマが近くに潜んでいる場合が多く、子を守るための防御本能から高い攻撃性を示す可能性が高まります。子グマを発見した場合は、速やかに遠ざかる必要があります。
第3章 クマよけスプレーの活用
予防策を講じていても、不意にクマに遭遇してしまう可能性はゼロではありません。遭遇時に重要なのはパニックに陥ることなく、クマとの距離と行動に基づいた適切な対応を取ることです。
クマよけスプレーは、近距離で遭遇して襲いかかろうとする熊に対して使用し、撃退するスプレーです。
熊スプレーの主成分は、唐辛子などに含まれる辛みをもたらす天然の有機化合物・カプサイシンなどの辛み成分です。スプレーには強力な刺激成分が含まれており、これがクマの粘膜や呼吸器系(口の中など)に作用することで刺激(辛み成分による苦痛)を与えてひるませ、撃退する仕組みとなっています。
【2025年】熊スプレーのおすすめランキング|効果や使い方も解説 | YAMA HACK
なお、クマ撃退スプレーは護身用品であり、屋外で携帯する際は軽犯罪法の適用を受ける可能性があります。スプレーを単品で携行せず、登山用品や現場で使う際に必要な備品などと必ず一緒に荷造りするようにしましょう。
第4章 クマに襲われたときの防御姿勢
クマの威嚇がエスカレートして襲いかかられた場合、防御姿勢を取らなければなりません。
クマによる攻撃を完全に防ぐことは困難ですが、致命傷を防ぐことは可能です。攻撃を受けた場合、反撃しようとせず、重要な部位を守る「サバイバル姿勢」を取ります。
取るべき防御姿勢は、うつ伏せになり、顔と腹部などの内臓器官を地面に向けて守ることです。
特に重要なのは、首の後ろを両手で回して保護することです。クマはしばしば人の頸部を狙うため、首の保護は致命的な損傷を防ぐ上で重要にとなります。リュックサックを背負っている場合は、それが背中のプロテクターとして機能するため、可能な限り利用しましょう。クマに体勢を崩され転がされたとしても、すぐに元のうつ伏せの防御姿勢に戻ることが必要です。
こまめに情報チェックを
環境省や各自治体は、クマの目撃情報に関する注意喚起をホームページやチラシを通じて提供しています。こういった情報を定期的に確認することも重要です。
クマに関する各種情報・取組 || 野生鳥獣の保護及び管理[環境省](env.go.jp)
まとめ
クマとの遭遇に対処するには、以下のポイントが重要です。
①予防の徹底
鈴やラジオなどで音を出し、人間の存在を積極的に知らせ、さらに匂いのする食料や生ゴミを厳重に管理することで、クマとの接触そのものを未然に避けます。
②距離の管理
万が一遭遇した場合、決してクマに背中を見せて逃走せず、目を離さずにゆっくりと後ずさりすることで、非攻撃的な意思を示し、安全圏まで距離を広げます。
③最終防御
攻撃を受けた場合は、迷うことなくうつ伏せの防御姿勢に入り、特に首、顔、腹部といった重要な部位を守り、致命傷を避けることに専念します。
遭遇したときに「落ち着いて後退する」などの正しい行動を行うことはもちろん大切です。しかしそれだけでなく、音で知らせる鈴やブザー、撃退スプレー、電気柵といった熊対策グッズを備えておくことが、日常の安心につながります。共通して言えるのは、「準備をしておけば安心できる」ということです。
ぜひご家庭や地域で熊対策を見直し、場合によっては安心を支えるグッズを取り入れてみてください。
免責事項
本記事に記載されているクマとの遭遇予防策および遭遇時の対応方法に関する情報は、一般的な知見や推奨事項に基づき作成されています。
しかし、野生動物の行動は予測不可能であり、これらの対策や対応を講じた場合であっても、クマとの遭遇やそれによる事故、損害などを完全に防ぐことを保証するものではありません。
最終的な判断と行動については、ご自身の責任において行ってください。
本記事の内容を実践したことにより生じたいかなる損害や不利益についても、当方は一切の責任を負いかねます。
最新の出没情報、地域の具体的なガイドライン、および専門家の指導などに従うことも重要です。
安全を最優先に行動し、常に周囲の状況に十分にご注意ください。
また、本記事は特定の地域や状況に特化したものではありません。必ず、活動される地域の自治体や関連機関が提供する最新のクマ出没情報や、地域特有の注意事項をご確認ください。
参考文献
相次ぐ被害「人を恐れないクマ」はなぜ増えた?最前線の研究者が教える「熊害が発生するワケ」と「遭遇時に身を守る対策」、そして共存への可能性 | 東洋経済オンライン
クマに関する各種情報・取組 || 野生鳥獣の保護及び管理[環境省](env.go.jp)
ツキノワグマ情報について - 神奈川県ホームページ(pref.kanagawa.jp)
クマ保護管理について - 特定非営利活動法人ピッキオ(npo.picchio.jp)
クマの目撃情報について(注意喚起) - 静岡県森町(town.morimachi.shizuoka.jp)
出会った時は(ヒグマ対処法) - 知床財団(shiretoko.or.jp)
市内でクマが目撃されています | 静岡県富士宮市(city.fujinomiya.lg.jp)
【2025年】熊スプレーのおすすめランキング|効果や使い方も解説 | YAMA HACK